Archive for 11月, 2010

collegio

江戸の崖 東京の崖 その22

[ピタゴラス]
NHK教育テレビ放映「ピタゴラスイッチ」は4~6歳児対象なのですが、大人も文句なしに見ていられる数少ないテレビ番組です。
「ピタゴラそうち」という、ビー玉ころがしドミノも毎回楽しめますし、「ぼてじん」なる、とぼけたキャラクターもいい。
「アルゴリズムたいそう・こうしん」も、スーツに身を包んで行進する体育会系お兄さんが、毎回同じ動作をするけれど見ていて飽きない。
「ピタゴラスイッチ」というネーミングも嬉しい。
ところで、崖の高さを計測するのは、けっこう難しいものがあって、例えば神田川のキリギシの高さなどは、錘付紐を垂直に垂らすのが一番だけれど、そのような足場がない。あっても一般が立ち入れない。
これは日暮里の鉄道線路際の垂直壁面でも同じ。
何でも電気の現在(いま)だから、なにか道具があるはずと思っていたら、新聞の新商品紹介欄に、携帯型レーザー距離計があった。
レーザー光線を利用して、対象地までの直線距離と水平距離が計測できる。
何のための商品かというと、ゴルフショットの弾道見当用なのですね(ただし公式競技には使用できない)。
けれども水平距離と直線距離だけでは崖の計測にはならない。角度か高さのいずれかがわからないと、「三角形」は描けないのです。
しかし、携帯型レーザー距離計でも「ピタゴラス機能付」というのがあったのです。つまり高さも、角度もわかるものが。
これはよいかなとメーカーに訊いてみると、やはりゴルフ用だけあって、その場合は最短でも水平距離10mが必要と。それでは身近な崖の計測には利用できない。
探索の果ては、あたりまえだけれど、結局はプロ用、つまり土木・建築用測量である、ピタゴラス機能付レーザー距離計にたどりつきました。
けれども、結構なお値段のそれを、手に取って試す機会には、まだ恵まれていないのです。
そうであれば、やはりアナログ。電気道具に頼らず、昔懐かしいクリノメータ(手作りの職人さんがいなくなっているそうです)や、折尺。歩測(手測や目測、身長測を含む身体測量)、階段測量、そしてピタゴラスの定理からのアバウト計算こそが、崖マニアには相応しいといえるのです。
デジタル(自動)であろうと、マニュアルであろうと、ピタゴラスはピタゴラス。

collegio

江戸の崖 東京の崖 その21

俳号を「青崖」ないし「崖青」というのは「生涯一青少年」のつもりだったのですが、寺山修司に次のような歌があって、人に訊かれたらこれが号の根拠だと言おうかなとも思っています。

亡き父の歯刷子一つ捨てにゆき断崖の青しばらく見つむ
(寺山修司『田園に死す』1965)

ここ10年ほど毎月10句掲載していただいている「秋桜」という俳誌の近作のひとつは次のようなもので、くくってタイトルを「真夜中の崖」としました。

真夜中に水の光りて満ちてくる
真夜中に鏡屋二人訪ね来る
真夜中にうしろの正面私だけ
真夜中に鍋割峠に埋めに行く
真夜中に天神様の細道で
真夜中に灰撒人と成申
真夜中に崩橋渡つて沓掛けて
真夜中に崖鳥来い来い言うて翔ぶ
真夜中に崖猫ならはるよろしおす
真夜中に飛行崖来て待つてゐる

まあ、最後の一句は「天空の城ラピュタ」というより、ハリウッド映画「アバター」のポスターが頭にあったのですが・・・

collegio

江戸の崖 東京の崖 その20

この11月30日の内閣告示から、公用文や新聞にも「崖」という文字を使用することが「可」となりました。
いわゆる改定常用漢字です。
戦後間もなく日本語の表記規範とされた「当用漢字」(昭和21年内閣告示)1850字、およびその後ややゆるやかな表記「目安」とされた「常用漢字」1945字のなかにも、「岸」や「涯」はあっても、「崖」という文字は外されていて、いわば文字の「ママコ」扱い。今度の追加196字のなかに入りこんだ裏にはどのような判断があったものか。
常用漢字という考え方自体は大正12年、昭和6年、昭和17年とそれぞれに結節があったようですが、そこも多少の穿鑿をしたくなる。
いずれにしても、このブログのタイトルにも堂々と「崖」という文字が使えるようになってオメデタイわけですが、それでもすでに公文書では「急斜面」のほうが普及していて、今後も「崖」を見かけることはあまりないと思われます。
「崖」という文字、そしてその「音」はつまりは「情動的」であって、タテマエ上アイマイを嫌う公文書にはなじまないのですね。