日本列島の放射性物質汚染に乗じて、悪質な「除染企画」が蠢動している。
たとえば線量の高い、葛飾区の「都立水元公園」。
広大な水と緑にめぐまれたこの場所から、除染名目で草木を一掃し、コンクリートとアスファルト、人工芝の「運動公園」化してしまうとしたら、屋上屋を重ねる愚行というものだろう。
まずは局地的気候変動がおこる。
熱帯夜と集中豪雨が倍加する。
そうして、クーラーの稼働時間が延長され、その排熱もますます耐えられないものになる。
23区中最大規模の面積をほこる「水元公園」の入口付近
7月23日放映「NHKスペシャル 飯舘村 田中俊一の発言」。
浜岡原発は安全と発言した田中某(元原子力学会会長、元原子力安全委員会会長代行)が飯舘村の区長宅を訪れて、「除染のために木を伐って、谷ひとつくらい潰して汚染廃棄物処理場にしないと、村人は家に帰れませんよ、ヘッヘッヘ」というわけだから、醜怪(グロ)極まる。
ジャン・ジオノの「木を植えた男」という話は映画にもなったが、この男はその真逆で、放射能で汚染した挙句、村を丸裸にし、汚物を押しつけるわけだ。
そもそもどうして土下座謝罪し、汚染物はすべて自分のところで引受けますと言えないのだ。
村人も、どうして「下手人が何しに来た、とっとと帰らないとぶち殺すぞ」と言わないのだ。
現代日本は「倫理」も「正義」もなく、「居直り説教強盗」が横行する無法列島にすぎないことを、まざまざと示した場面だった。
江戸時代であれば、この男、ナントカ学会の一族郎党含めて、とうの昔に獄門さらし首になっていた。
すくなくとも、きょう日娑婆でちょろちょろできる分際ではない。
基本的な環境が「森林」である日本列島が、もっとも美しくまた緑豊かな土地から、その保水力を奪い、土壌を流出、壊死させ、溢水を誘発する禿げ山と汚染谷の出現に与(くみ)するとすれば、その中心に原発の推進者とその金にぶら下がる愚者たちの行いがあるだろう。
村が村であるためには、すなわち土壌流出と砂漠化を防ぐ手段は、可能なかぎり詳細な「汚染マップ」にもとづいた、村人自身の計画と実行による、きめ細かな除染と立入制限区域設定以外に方法はない。
「外部」の厖大な金(カネ)をアテにすることは、結局新たな「原発依存」にすぎないのだ。
地つづきなんだし、風つづきなんだし、不安ながらも基本的には遠い僻地のことのように思っているけれど、実は東京もしっかり放射性物質に汚染されている。
昨日、葛飾区東金町(ひがしかなまち)七丁目の、カスリーン台風による「桜堤」の決壊場所を見に行ったのだけれど、ひょいと線量計のスイッチをオンにしたら、すぐに警告音(アラーム)が鳴りだした。
30μSv/h以上で、自動的に鳴るように設定されている。ご覧のように地表はかなり高い。
昭和22年、カスリーン台風時の決壊場所に立つ説明板。向こう側は江戸川の土手。説明板の下に縁量計
スイッチをオンすると、アラームが鳴りだすこの線量。1.5mの空中線量は0.28μSV
たしかにここは都内でも汚染濃度の高いことで知られる「水元公園」のすぐそば。
けれども、問題は水元公園とその周辺だけではない。
金町まで帰る途中にあった小さな児童公園(東金町五丁目児童遊園)の、すべり台の着地点。
行政はなんの手もほどこさずに、そのままにしていて、利用者もいつもと変らず、子どもを遊ばせているようだ。
とりあえず、ここにその記録を残しておく(いずれも2011年7月28日午後計測)。
ついでに言えば、文京区の根津二丁目児童遊園内でも、地点によってはもっと高い線量値を検出(2011年6月28日午後、地表で0.57μSv)しましたから、東京の端っこの話だろうと安心しているわけにはいかないのです。
都は新宿の計測値だけ発表して、低いの、基準値以下だのと済ましているようだが、ご覧のように、フクシマなみの高濃度汚染地域(ホットスポット)が実在する。
金町浄水場の水道水の放射性物質検出値も、6月一杯「不検出」と発表しているけれど、国や都道府県の「大本営主義」(嘘と隠蔽)がはっきりしている以上、どこをどう計測して「不検出」なのか、疑ってかかるのは「庶民の知恵」というもの。
これを別の言葉で言えば、「風評」という名の「市場原理」なのだ。
最近、東京税関が、飲料水の輸入量が「過去最大」となったと発表したのは当然のこと。
東京が「中央」の顔をしていつまでも平然としていたら、結果は惨いものになるだろう。
東京も、ひとつの地域、地方にすぎないのだ。
天災だろうと人災だろうと、現場を歩き、しらべつくして発表し、必要な措置をとることは、税を徴収し、それで成立している行政体(国、都道府県、市区町村)の義務だろう。
それをやらないのは、顔も心も、住民の側ではなく、「上司」を向いているからだとしたら、一党独裁のどこかの国と変らない。
それでもやらないなら、誰かが記録し、それを遺していくしかない。
遺すといえば、一人ひとりが髪の毛を数センチ、20本ほど切って、とっておくべきという提言がある。
自分がどれだけ汚染されたか、重要な証拠になるはずと。
いま、ネットで大変話題になっている、2011年7月27日 (水) 衆議院厚生労働委員会における「放射線の健康への影響」参考人説明(児玉龍彦 東京大学先端科学技術研究センター教授,東京大学アイソトープ総合センター長。この参考人説明を、NHKは放映しなかった)のサイトを、私も念のため下に掲げる。http://www.youtube.com/watch?v=O9sTLQSZfwo
東大には、アイソトープは飲んでも大丈夫と言ったデタラメきわまりない「教授」もいれば、このようなまっとうな教授もいたのだ。
児玉教授が怒りをもってまず明らかにした、「チェルノブイリ事故と同様、原爆数十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと大量の残存物を放出した」は、「産経ニュース」の悪質な風評拡散である、「1960年代と同水準、米ソ中が核実験「健康被害なし 東京の放射性物質降下量」(2011.4.28)を完全に吹き飛ばした。
1月以上の御無沙汰。
この間、腰の痛みが左から右へ転移。
これもradiationの影響か?
村では、復興と絆を祈念して、例年この時期に行われる、草野心平をしのぶ「天山まつり」を、特例のようなかたちでやるという。
23日の土曜日。
モリアオガエルの縁、蛙の詩人草野心平以来東京者が接待を受ける「祭り」のようで、いつもはあまり気のりしないのだけれど、今回は特別だから押して1泊で出掛けた。
2011年5月12日の東京新聞から。「緊急避難準備区域」内であっても、川内村の過半は「クールスポット」であることがわかる
川内村は、フクシマ第一原発から30キロ圏内(一部20キロ圏内)にあって、自主的に「全村避難」した。
避難者の「一時帰宅」第一陣報道で知られることになった村だが、実は放射性物質汚染は周辺の市町村に較べてエアーポケットのように低い。
蝉時雨につつまれるから蝉鳴寮(セミナリオ)
キキョウの花は毎年咲く。花の中に、時々クサグモが陣取っている。時に0.36まで上がる。
もちろん場所によってかなりの程度差があるが、村の旧はやま保育所を改装したウチ(別荘兼倉庫。蝉鳴寮:セミナリオと命名)は、写真にもあるように、概ね0.31マイクロシーベルト/時。
2011年7月24日午後2時前後、福島県双葉郡川内村上川内の、地上約1.5mの数値である。
この程度なら都内のホットスポットと大差ない。
とはいっても、一般人の年間許容量1ミリシーベルトとすると、内部被曝を考慮しないでもその2倍半はカブることになる。
0.30を超えると警告音(アラーム)が鳴るので、やたらうるさい。
しかし、村の他の地域、西側の山腹などでは、その倍以上の数値となっているようだ。
全体としては奇跡的な低汚染地域であるからこそ、可能な限り詳細な汚染マップが切実に待たれるのだ。
下の写真のように、同一敷地でも、微細な条件によって汚染度に濃淡がでる。
南に面した軒下の、雨落ち部分はとくに線量が高い
放射性物質は、苔が吸収する、というか苔によく溜る。写真はいずれも、2011年7月24日午後2時頃。