Archive for 1月, 2021

collegio

ホテル生活必携

感染症蔓延拡大の真最中だが、東京から仙台に来て5泊目である。
不要不急の逆で、至急必要の用務は、昨年末80歳になったばかりの認知症の従姉のケアのためである。

戦争未亡人の一人娘で、母子ともに実家である私の家に入りびたりだったため、幼時は実の姉と思っていた。
今ならば引籠りという言葉があるが、就職も結婚もしたことがなく、15年前に母親が亡くなってから一人暮らししていたものの、一昨年ころから被害妄想を訴えるようになり、昨春には母親が帰ってこないと言い始めた。
昨秋からは預金通帳や保険証などが見当たらず、聞くと母親が持っているから大丈夫と言う。
ケアの側が何度家探ししても、それら肝心のものは出てこない。

というわけで、保険証を再発行してもらって私が預かり、それをもとに通帳類を再発行してもらう手続きと当座の生活費手渡し、そして今後のケア体制づくりのため、11日から仙台に来ている。
しかし当日は仙台降雪。
とは言え30センチも降った昔と比べればちゃちなもので、翌朝の積雪は気象台発表9センチである。
もちろん東京よりはだいぶ寒く、地下鉄の駅から結構歩くその家までは道も滑る。
しかし東京のマンションの北向きの、ロク暖房なく命を縮めるような部屋にくらべれば、土井晩翠旧邸近く、仙台の中心部にある定宿ホテルの一室は天国である。
14日には地域福祉の責任者やケアマネジャー、行政書士など数人で従姉に関してZoomケア会議をもった。
地裁に後見制度を申し立てるにも専門医の診断書が必要だが、病院は何ヶ月も待ちの状態。感染症のため東京から来る者は病院には入れずケアマネジャーが付き添うが、病院まで連れ出すため私は来月半ば過ぎにまた来ないといけない。

15日は本人を連れて預貯金を扱う支店2ヶ所に出向き、通帳再発行手続きを済ませたものの、後日書留郵送されてくる再発行申請照会状(地方銀行の場合)や再発行通帳(ゆうちょ銀行の場合)を受け取り、それを保管できるかどうかが、またもうひとつのハードルである。
なにせいつ届くか確定できないものを、独り住まいの認知症本人が受け取るしかないのだから、確保の保証がない。ともかくも1週間後にはまた仙台に来ざるを得ないだろう。

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というわけで、上掲写真はホテルの部屋の机の一シーンである。
奥の黒っぽい板は部屋備え付けの鏡で、これはZoom会議の準備(自分の写りの確認)とレフ板代用。
後列左から、蓋付きガラス瓶3本は、ダージリン、ウヴァ、アールグレイの紅茶3種(スリランカ産無農薬茶。農薬基準がゆるすぎて輸出できない日本のお茶類とくにペットボトルの緑茶は飲用不可)、蜂蜜ボトルの中身は自家製プリックナンプラー(これがないと私にはまともな食事とならない)、白いのは紅茶携行用ステンレスボトル、そしてホテル備品のカップ(緑茶、紅茶、コーヒー兼用)。
前列左から、ホテルでの食事用ステンレス食器とスプーン(Seriaで購入)、モンベルのマルチツール(いわゆるn徳ナイフ)、ホテル備品のカップ蓋(ないしソーサー?)と使用済ティーバッグ。
そして手前は、仙台に来て買ったダイソーの鼻毛ハサミとマルチツール。
左端、右端はホテルの備品でティッシュ箱と電子レンジのそれぞれ一部が写っている。電子レンジの上には電気湯沸し器が、そして机の右下には小型冷蔵庫がある。

この定宿は食堂がなく素泊まり専用だが、設備が新しく備品もそろっていてリーズナブル、これまで何軒か何回か使った仙台の老朽安ホテルと比べれば、格段によい環境である。食べものは駅ビルやデパ地下、コンビニや近くの古い雑貨店で適宜選べばよいのである。

さて、ここで言いたいことは、手前に写っているマルチツールとハサミのことである。
いずれもホテル生活には必携なのだが、100キンで買ったのが大失敗だった。
両者ともほとんど役に立たないのである。

分類としては刃物であるのだが、これらは「刃」そのものがない。
マルチツールはエンピツを削れず、リンゴの皮を剥くのにも難渋し、リンゴを断ち割るくらいが関の山、ハサミは鼻毛を引っ張ってしまい、買いものの正札紐を切り離したりほころび出た衣類の糸を切る程度にしか役立たない。
所詮100キンに、「刃」を求めたのが失敗であった。
高価なスイス製マルチツールが真中に鎮座しているのは、その失敗の結果である。

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御 慶

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宮城県美術館前庭の列柱『マアヤン』は1995年、広島原爆投下の日に落成式が行われた。「『マアヤン』は環境彫刻であり、広島の犠牲者にささげられる」(作者:ダニ・カラバン)。県知事の移転撤回発言で、本館とともに破壊から免れたようだ。

新年のご挨拶を申し上げます。

感染症はヒト世界の様相を否応なく変容させつつあるようです。
2020年は諸講座講演がとりやめとなり、いくつかの事柄に集中できた、というよりそれ以外に仕様もなかった年で、之潮からの新刊も『天軆地圖』と『123箇月』の2点のみ(ともに極少部数の短詩集)でした。
しかし10月末には拙著『新版 古地図で読み解く江戸東京地形の謎』(二見書房)が上梓、11月初めには季刊『武蔵野樹林』(No.5,角川書店)に「武蔵野地図学序説」の連載を開始し、本年にかけてささか考究整理ができつつあるように存じおります。
なお、早稲田大学エクステンションセンター中野校の講座「都心の微地形」は今年度春から再開講の依頼がありOKと返事しましたが、どうなるでしょうか。

皆様のご自愛と清祥そして変わらぬご厚誼を念じ上げます。