Archive for 8月, 2025

collegio

「宮城野」考

8月末締切の原稿、編集、査読、シラバス提出を終え、少しは余裕ができたので、本ブログ「宮城野と武蔵野」シリーズのまえがきのようなものを書きつけておく。

少年の頃、競技大会でよく駆り出され、後に自分もそこで走るようになった「ミヤギノハラリクジョウキョウギジョウ」は、「宮城の原 陸上競技場」だとばかり思っていた。
「宮城の原」ではなく「宮城野原」が正式名称だと認識するようになったのは、いつの頃だったろうか。「宮城」+「野原」と解釈したわけではなく、するりと「宮城野原」で頭に入ったのである。

それから幾星霜、元来は「宮城野」だったものに、どういうわけか、いつの間にか、「原」が付けられて「宮城野原」になってしまったのだと気がついたのはごく最近の話で、拙著『武蔵野地図学序説』執筆中、語尾に「野」や「原」のつく言葉を『日本歴史地名大系 49 総索引』から拾っていたときであった。

「野」なのか「原」なのか、似たようなものだが、いや、だからこそ「野」+「原」は重言、重複表現には違いない。ひとつの言葉、地名として、オカしく、ムリがある。

しかし現仙台在住者は、聴き慣れた「ミヤギノハラ」には特に違和感を覚えないだろう。

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『武蔵野地図学序説』書評

東京地学協会の『地学雑誌』(第143巻2号)や日本地図学会の『地図』(第63巻2号)等に拙著書評が掲載されたが、以下は地図情報センター『地図情報』誌(第45巻2号)のものである。
筆者は面識はないが、明星大学教育学部准教授の由。

拙著は図版多数のオールカラー本である関係上、本文や註を読み飛ばして「ビジュアルハンドブック」などという誤認も生まれた(公共図書館での本書紹介文)。
また原価の関係上ページ数制限により註の活字ポイントが小さいため、註まで読み込んだ向きは多くはないかも知れないが、本書の意図はそこにこそ表現されていると言っても過言ではない。
この書評は比較的よく読んでいただいたと思われる。

ただ少し付け加えておくと、私は拙著で「武蔵野」を主題としたわけではない。
帯文にもあるように、それは単なる展開フィールドで「地図学」も仮借にすぎない。
私が言いたかったことは、ホモサピエンスの現段階とその運命に関わることがらである。
そこまで読み込んでくださった読者は少ないかもしれないが、いるとすれば著者冥利につきる。

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