Archive for 1月, 2017

極月の夜の風鈴責めさいなむ
時節ゆゑ掲句としたれども、此れ奇妙なるヒユモアの底に湛へたる鋭き悲哀を感ぜしめ、あらためて秀逸句と認めずばあらず。取り込み忘れられた風鈴の軒先寒風にさらされ已まざる音を悲鳴と聴くか、或はなにがしかの感慨になぞらへて己がそをさいなむSMめきし戯画図とせしものか。否、白泉生涯を画せし治安維持法逮捕を踏まへばむしろかの大戦期「空気を読めぬ」「空気に馴染まぬ」時節遅れ者の拘引拷問の記憶転ぜしと解すことこそ自然なれ。「四合目からの出発」阿部筲人理想句と高唱してやまざる飯田蛇笏の
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり
が「日本的美観」を背負ふ伝統俳句の極致とせば、こはその対極に屹立し、飯田親子が口を拭へる翼賛句作の足元を抉りたり。龍太この句執拗に貶めたりと。げに、さこそあらめ。

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永らく依存してきた中国漆の輸入途絶を機に、日本の漆器業は産業として大きな変化を遂げた。漆器産地ごとの技術変化の具体相をとらえた好著。

馬場章著『漆器業地域の技術変化』
ISBN978-4-902695-30-4  C3025
B5判 上製・函入 145ページ
限定200部 本体 2800円+税

目 次
(口絵カラー「漆器の絵暦」・モノクロ口絵)
序 章 研究の目的と方法、および全国の生産動向
と研究対象地域の特色
第1章 漆器工業地域の技術変化と生産構造
1 木曾漆器工業地域
2 輪島漆器工業地域
第2章 漆器工業と塗物工業の併存地域における技術変化と生産構造
1 紀州(海南)漆器工業地域・会津漆器工業地域の技術変化と生産構造
2 越前漆器工業地域の技術変化と生産構造
3 高松における漆器工業の生産構造の変容と要因
4 山中における漆器工業地域の技術変化と生産構造
第3章 塗物工業地域の技術変化と生産構造
1 静岡漆器工業地域
2 名古屋における漆器工業(一閑張漆器工業・硬質漆器工業)の盛衰について
   あとがき
   英文概要
   索 引

馬場 章(ばば・あきら)
1934年、東京生まれ。
早稲田大学教育学部卒業、日本大学大学院文学研究科地理学専攻修士課程修了。
駒場東邦中学校・高等学校教諭、長野大学・日本大学非常勤講師を歴任。