前回お知らせした「トークサロン」にお運びいただき感謝申し上げます。
いつも話は面白いと言っていただけるのですが、本人は後からもっとあそこを丁寧に、もっと絵を増やして、と後悔。
できれば、十分にかたちを整えて本にして・・・と考えますが、これもいつもながら目の前の仕事で流れてしまう。
どこかの雑誌に連載するとか、他社で本にする、というように他人に強制されないとダメなのですね。
話するのは好きですので、また聴いて頂ける機会があるかと思います。
原則としてその都度「その場所」の話をメインにしますため、準備に結構時間がかかるのが欠点ですね。
今月末、30日にも話する予定がありますが、こちらは地理学・地図学関係者の内輪の会のようです。
また、来月末刊行予定の『川の地図辞典』〈多摩東部編〉と同〈江戸・東京23区編・補訂版〉の【刊行記念ウォーク・玉川上水に沿って】を、3月はじめに実施したいと考えています。
確定次第この場でお知らせいたしますので、お楽しみに。
今週の土曜日の午後2時から、早稲田で地図がらみの話をすることになっています。
どなたでも参加できます。
お時間のある方はどうぞ。
《第7回奉仕園トークサロン》
「地図と古地図のはざ間」(仮題)
日時:2010年1月16日(土)午後2時半から4時半頃まで
話す人:地図研究家 芳賀 啓氏(早稲田奉仕園・友愛学舎OB)
場所: 早稲田奉仕園敷地内 日本キリスト教会館6階フォークトルーム
参加費:1000円(資料・お茶・お菓子など含む) ※学生無料
お申し込み・お問い合わせ:鍛治 tel. 03-3435-5657 (直通)
e-mail: takashix@giga.ocn.ne.jpまたは kaji@wtctokyo.or.jp
財団法人早稲田奉仕園〒169-8616 東京都新宿区西早稲田2-3-1
地図はこちら http://www.hoshien.or.jp/map/map.html
中沢某の『アースダイバー』(以下、『アダイ』という)の初版は2005年5月だから、もう5年前に近い。
ずいぶん話題となり、売れもした本だったが、当初から?付きだった。
10年以上前、東上野にあった彼の事務所で、私は彼に向って「土地の凹凸」の話をしたが、彼は面白がって聴いていただけだった、というエピソードは、彼の本が出てからどこかで披露したことがある。
しかしそもそも、ベストセラーというもの自体に?を付けておいたほうがよい。あれは「空気現象」だから。
今朝の「東京新聞」(2010年1月9日)の26面(最終面)の《東京どんぶらこ》というシリーズの411回目は、中沢某が顔写真付で「四谷三丁目」を書いていて、その見出しが例によって「異界との境界地帯」というのだった。
中身は『アダイ』を、新聞用にちょっと書きなおしただけなのだが、本ではさすが担当編集者が疑問部分にチェックを入れていたと見えて、アヤシイ部分は入念に糊塗隠蔽されていたのが、新聞ではそれが「そのまんま」になっていて、4年と7ヶ月ぶりに馬脚が露呈することになった。
曰く、「このあたりがどうしてこんな地形をしているのか、その理由をいまでは私はこう考えている。いまから数千年前、地球は温暖化して、海水面はいまよりも数十メートルも高くなった。いわゆる縄文海進である。その時代、海の入り江は内陸深く侵入していた。そのために、洪積地であった四谷の高台(ここにいまの新宿通りの走っている)は、南北からの深い渓谷によって、エッジも鋭くえぐられていたのだった。/その谷の両脇の傾斜地に、古墳時代になると横穴墳墓がたくさんつくられるようになった。こうしてここは生と死をつなぐ境界地帯となったのである。」(原文ママ)
チェックの入らない文章だから、うんとわかりやすい。
「数メートル」の誤植ではない。「数十メートル」と書いている。
確かに、新宿あたりの標高は40メートル前後だから、海に溺れさせるためには「数十メートル」でなければならない。
つじつまを合わせたわけだ。
けれども、縄文海進時の海面変動は現在とくらべて3メートルほど。百歩譲っても数メートル、というのが定説。
新宿三丁目が海だったのは、数千年前ではなくて、最終間氷期の12~13万年前。
それは縄文時代なんかではなく旧石器時代だが、関東平野の大部分は「古東京湾」の下で、人間の痕跡は存在しない。
「昔々、ここは海の底」という話は、どこにでもある。わかりやすい。間違い、ではない。
地球表面全体が水だった時代もある。氷だった時代もある。
問題はその「昔」がいったいいつの話なのか、だ。
『アダイ』は、「雰囲気」と「つじつま合わせ」でできあがっていたようだ。
まことしやかなエライ人、神がかりの断言者はほかにもたくさん居て、その「説」や「人物」がなんらかのきっかけで浮上し、神話化すると、とりまきや「弟子」の類がまたそれで一商売やらかす。
世の中は、いつも変わらない。
年明けですが、当方にとって「地図の本」は、なんといっても『川の地図辞典』。
その〈江戸・東京23区編〉は再版も品切れで、現在第3版「増訂版」を作製中です。
同時に、『川の地図辞典』〈多摩東部編〉も製作中。
昨今は、再校ゲラの点検で野外に出ることが仕事。
晴天つづきでまことにありがたい。
今回は「地元」ですから、電車と自転車の組合せ。
しかしアラカン卒業アフタカンとなると、一日中自転車を乗り回すのはキツイ。
でも、昨日は朝7時から10時までが電車。それから夕方5時までが自転車。
両方をなんとか2月中に刊行できるよう、努力しています。