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短詩・川内村

みちのくの楢葉(ならは)郡(こほり)の木戸川の谷間の村に人の影絶ゆ

見えぬもの降(ふ)り来(く)全村離脱とす

この道やいつまたたどる赤い月

山里は水あまかりきニガヨモギ*

生きてまた目(ま)みゆることの青蛙**

山寺や草萌え墓を埋めんとす***

山里や文庫の池の赤い月****

山里や辛夷(こぶし)蕾のままにして

山里に人の影絶ゆ水の音

消ゆるものバビロン電飾村は人

村ひとつ地獄の上の花見かな*****

*ニガヨモギ伝説は、エデン追放の蛇、ヨハネの黙示録の隕石、ウクライナの黒い草、北欧神話の死の草など。
**日本固有種にして天然記念物のモリアオガエルは平伏沼(へぶすぬま)に棲息、雨季に樹上産卵する。
***洞秀山泰亨院長福寺には、画家・詩人の辻一(つじまこと)や、詩人の会田綱雄の墓がある。
****草野心平の蔵書寄贈を契機につくられた「天山文庫」には、「十三夜の池」がある。
*****世の中は地獄の上の花見かな(小林一茶「七番日記」)

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