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江戸の崖 東京の崖 その25

[御所組一家、崖組一家]
ウサギ年だというので、「辛卯」(かのとう)という文字が入った賀状が来るけれども、元来「卯」という文字はウサギとは何らかかわりがない。
もともとは左右対称をあらわす字形。十二支の第四位に用い、わかりやすいように動物をあててウサギとしただけの話。
十二支採用は、ウサギには関心を持ってもらえる分、有難半分迷惑半分でしょう。
さて、昔話ではカタキどうしのウサギとタヌキ。
東京の都市部では絶滅したとみられるニホンノウサギですが、敵役のほうはしっかり生き残っている。
今朝の東京新聞によると(「東京生き物語2011下」)、23区内で約1000匹のタヌキが棲息する由。
「東京タヌキ探検隊」の2007-09年調査では、目撃件数の多い順に、練馬区77、板橋区64、杉並区62、中野区39、文京区28、世田谷区28、新宿区26、北区18、豊島区17、千代田区10、足立区10、渋谷区9、港区4、目黒区3、大田区3、台東区2、葛飾区2、江東区1、品川区1、中央区0、墨田区0となる。
このうち、千代田区の10は明らかに皇居にお棲まいの「御所タヌキ」。
渋谷、新宿の数字も、新宿御苑、明治神宮、赤坂御所においでのご縁戚でしょう。
古い巣穴のあった、麻布の狸穴(まみあな)は港区ですが、狸穴のタヌキと崖については、本連載「その18」で述べた通りですので省略するとして、皇居とその関連施設以外のタヌキの居住場所はほとんどが急傾斜地、つまりは崖地なのです。
一定の面積をもった緑地は、皇居や神宮のように人間社会における強力な規制によって保全される以外は、人間の経済活動のおよびにくい急傾斜地にかろうじて保たれています。
グリム童話には決して出てこない、ユーラシア東部に棲息するネコ目イヌ科タヌキ属(ウサギはウサギ目ウサギ科)の、日本列島は東京在住グループにも、御所組一家と崖組一家という派閥が存在するのです。

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