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地図学の先達 1987年11月6日

写された面々の苗字を記した紙とともに、およそ35年前の写真が出現した。
地図学のうちでもとくに古い地図にかかわる先達が一堂に会した趣きである。
当然ながら、既に鬼籍に入られた人もすくなくない。
それまでの古地図研究の軌跡が、ある意味では断絶した現在、この写真の語るところもまたすくなくないと思われ、敢えて以下に掲げる。

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前列中央、杖を手にされた南波松太郎(1894-1995)先生はこの時御歳93。東京帝大工学部出身の日本史学者にして日本海事史学会名誉会長。
その古地図コレクション約4000点は、故秋岡武次郎先生のものと並び神戸市立博物館収蔵品の中核をなす。

向かってその左は西川治(1925-2019)先生。東京大学教授、地理学専攻。晩年まで「世界地図博物館」創設の意義を語っておられた。

南波先生右側の颯爽としたお姿は矢守一彦(1927-1992)先生で、大阪大学の教授にしてこの時は同大学図書館長。
ヨーロッパと日本にまたがる都市プランの研究(『都市図の歴史 日本編』『都市図の歴史 世界編』)にはお世話になった。

2列目中央は木下良(1922-2015)先生。神奈川大、富山大、國學院大の教授を歴任。古代交通研究会名誉会長で、故立石友男先生が実質編集にあたった画期的なアトラス『地図で見る東日本の古代』『地図で見る西日本の古代』の古代官道ルートは木下先生のお仕事に基いている。

3列左から2番目は式正英(1927-)先生。東大理学部で地理学を学び、建設省地理調査所を経てお茶の水女子大学教授となられた。
2009年上梓の著書は『風土紀行 地域の特性と地形環境の変化を探る』は之潮刊である。

前列右から2番目は清水靖夫(1934-)先生。法政大学で秋岡武次郎先生に学び、立教高等学校教諭にして法政、国士館両大学の非常勤講師をつとめられた。1980年代、柏書房が倒産の危機を反転することができたのは、清水先生の旧版地図コレクションと助言によるところが大きかった。

3列右から3番目は川村博忠(1935-)先生で、江戸時代までの日本列島の官製基本図である国絵図研究のパイオニアにして第一人者。山口大学の教授から東亜大学に転じ、その名誉教授。川村先生と各地の図書館や博物館で巨大な国絵図や日本図を閲覧し、かつ撮影などの手続きをしてつくりあげた大冊(複数)は柏書房のドル箱であった。

筆者の立場から自ずと「先生」とお呼びするのは以上の方々で、以下は「氏」とすることを許されたい。
最後尾、三角形の頂点に顔を見せているのは山口恵一郎(1921-1991)氏で、文部省から国土地理院を経、日本地図センター調査部参事役として活躍された。地名や地図に関する著作も多い。

そのほか名を挙げコメントすべき方々は多いが、それは追々加筆する予定である。

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