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三愚節 ―虚偽決済について

万愚節明けて三鬼の死を報ず
(「夜の風鈴」〈自昭和三十九年至昭和四十三年〉所収)

万愚節すなはち天主教の万聖節に付会せるApril fool’s day いはゆる四月馬鹿なり。
西東三鬼死去1962年(昭和37)4月1日午後0時55分にて、渡辺白泉新聞紙上にてその訃を知るらし。享年61と10カ月ほどなりき。

三鬼『俳句』誌(角川書店。1956年10月~翌7月三鬼同誌編集長たり)に「俳愚伝」を連載せしは1959年なれば、掲句三鬼とともに新興俳句旗手の一人たりし白泉その「愚」を符合させたるものなり。然りして「新興俳句弾圧事件」(京大俳句弾圧事件)にてともに逮捕さるも、逮捕劇に泳ぎ戦後俳壇中央に場を得たる三鬼と「われから孤高の天地」を選びし白泉の落差明らかなり。掲句「万愚」および「訃」ならず「死」てふ語に籠めし屈錯知るべし。

さりながら「倭」すなはち「長いものに巻かれろ式に従順」(小堺昭三『密告―昭和俳句弾圧事件』1979)の民俗こそ愚なれ。虚偽決済文書通行せば近代国家、立憲法治国家にあらず。政官民三愚節、列島浮かれの春明くれば衰亡これ必定なり。【評林 白泉抄19】

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