「原発事故直後、元放射線医学総合研究所の研究員木村真三さん(43歳)は勤務先の研究所に辞表を出し、福島の放射能汚染の実態調査に入った。

強烈な放射線が飛び交う原発から半径10キロ圏にも突入、土壌や植物、水などのサンプルを採取、京都大学、広島大学などの友人の研究者たちに送って測定、分析を行った。

かつて、ビキニ事件やチェルノブイリ事故後の調査を手がけた放射線測定の草分け・岡野真治さん(84歳)が開発した測定記録装置を車に積んで、汚染地帯を3000キロにわたり走破、放射能汚染地図をつくりあげた。

その課程で見つけた、浪江町赤宇木の高濃度汚染地帯では、何の情報もないまま取り残された人々に出会う。
また飯舘村では大地の汚染を前に農業も居住もあきらめざるを得なくなった人々の慟哭を聞き、福島市では汚染された学校の校庭の土をめぐる紛糾に出会う。

国の情報統制の締め付けを脱して、自らの意志で調査に乗り出した科学者たちの動きを追いながら、いま汚染大地で何が起こっているのか、を見つめる。」

以上は、今度の日曜日、5月15日(日)22:00~23:30に放映予定の、NHK教育テレビETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2カ月」の「あらすじ」。

「地図」を研究する者としては、1854年の8月から9月にかけて、10日間で500人の死者を出したロンドンのソーホー地区のコレラ大発生の原因をつきとめた「地図」(S・ジョンソン『感染地図』、S・ペンペル『医学探偵ジョン・スノウ』などの翻訳書がある)をも連想するが、これは「津波浸水地図」や「震災被災地図」などのレベルをはるかに超えた、今日もっとも切迫した「地図学」のテーマである。

必見。

5 Responses to “「地図学」のテーマ ―汚染地図 感染地図”

  1. collegioon 16 5月 2011 at 10:23:02

    わが国「公共放送」も、昼間は役人や産業界のウソも垂れ流しているが、こういうまともな番組をつくり、放映するだけの「品格」を一部に残していたのだ。
    けれども、高濃度汚染地域である浪江町の赤宇木地区の集会所に取り残され、寄り添って、1台のテレビを見ている人たちの映像は衝撃的であった。その人々は高濃度汚染地域が、まさに「ここ」だとは知らなかったのである。
    これは、政府と地方自治体による「棄民」である。
    上からの通達や指示を待って、「正式」の知らせがないから、と語る自治体の長の姿も、日本の「地方政治」を象徴して衝撃的であった。
    「あらすじ」に書いた、「福島市の校庭」は「郡山市の校庭」に訂正。

  2. shinon 16 5月 2011 at 17:03:02

    collegio拝見してます、JEDI-012ともうします
    この番組の件、今日AKiさんのブログで知りましたが、見損なっていました。
    大変残念です
    すでにNHK含めテレビの報道に嫌気がさしていましたし、昨日唯一見た NHKのニュースで民主党の岡田幹事長が、既存原発の増設工事を再開させ休眠中も稼働させる趣旨が発表してました
    木村真三さんの様な方が役所にも報道機関にも公共放送にも居なくなったのです
    再放送を期待するとともに、第二第三の研究者によって正しい観測がされることを期待します

  3. collegioon 16 5月 2011 at 23:37:52

    ありがとうございます。
    誰か、きっと録画していて、そのうち出回るのではないかと思っています。

    これはツイッターや週刊現代でも言われていることのようですが、文部科学省の放射線濃度測定値は地表数メートルから十数メートルで測定したもので、有志が地表1m前後の「ヒューマンレベル」で測っているのとは2倍以上の差があり、東京でも一般人年間被曝許容限度を超える値となると。
    このことは番組では触れられていませんでしたが、高濃度汚染地域に設置され、赤いビニールテープに書かれた「文部科学省測定中」の文字が、「無人」データの実態を示唆していました。

  4. iGaon 22 5月 2011 at 23:28:50

    20日未明の総合TVの再放送に引き続き、再々放送が5月28日(土曜日)午後3時から教育放送(Eテレ)であります。

  5. collegioon 23 5月 2011 at 5:41:25

    お知らせありがとうございます。

    昨日小平の図書館で、地図のお話する機会がありました。
    高齢者中心に80名ほどお集まりでした。
    小平の古地図のお話をはさみながら、『感染地図』も引用してNHKの番組を紹介し、かつ例のモニタリングポストの問題点を指摘しましたが、ほとんどの方がご存じなかったのは吃驚。

    ネットリタラシーといった状況があることがよくわかりました。

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