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原発とデータ

「山のために泣き叫び、野の牧場のために悲しめ。
これらは荒れすたれて、通り過ぎる人もない。
ここには牛、羊の鳴く声も聞えず、
空の鳥も獣も皆逃げ去った。
わたしはエルサレムを荒塚とし、山犬の巣とする。
またユダの町々を荒して、住む人もない所とする」
(「エレミア書」第9章10節11節)

前回、元福島県知事佐藤栄佐久氏の発言として、2002(平成14)年に発覚した東電の原子炉のデータ改ざん問題で、原子力安全・保安院が内部告発を受けたとき、
「保安院はまず東電に、告発内容と告発者の氏名を伝え、県には発表当時まで何も知らされなかった」ことに触れた。
つまり、東電=保安院レベルでは、まともな「データ」が公表されることはない、という「政治力学的な原理」が存在する。
現在、この状況に至ってもなお、である。

IAEA発表という今朝の報道がある。

飯舘村に避難勧告を=IAEA
 【ベルリン時事】国際原子力機関(IAEA)のフローリー事務次長は30日、ウィーンの本部で記者会見し、事故を起こした福島第1原発の北西約40キロにあり、避難地域に指定されていない福島県飯舘村について、高い濃度の放射性物質が検出されたとして、住民に避難を勧告するよう日本政府に促した。
 同事務次長は「飯舘村の放射性物質はIAEAの避難基準を上回っている」と指摘。日本側からは調査を開始したとの連絡があったことを明らかにした。(2011/03/31-01:48)

原発推進派として、チェルノブイリの被災状況を過小に評価したことで知られる同機関にすら、このような勧告に踏み切らせる現実がある。

東電や保安院、そして日本政府は何をしているのか、と言ってもはじまらない。
「情報」も、「指示」も、そこから我々のもとにやってきたときは、すでに遅いのである。

飯舘村は、福島県県庁所在都市福島市の東南東約20キロメートル。
「チェルノブイリは、55万ベクレル。福島県飯舘村は原発から40km離れているにもかかわらずセシウム137が326万ベクレル/平方m。既にチェルノブイリの6倍。半減期は、30年。」
(朝日新聞朝3月25日朝刊)

保安院が、事故の深刻度を示す国際原子力事象評価尺度(INES)を「5」に引き上げた(3月18日)、などというレベルではない。
人口稠密の日本列島では、チェルノブイリ(評価尺度「7」)を上回る被災が「想定」されるべきだ。

気象庁は今なお風向と放射性物質拡散シミュレーション画像の発表を封じられているようだが、爆発があった事故初期段階で、西風が吹いていたのは僥倖というべきだろう。

爆発は押えられても、放射線漏れの日々はなおつづく。それが「年単位」でつづくことは間違いない。
今日の東京は、「北の風、後やや強く」。

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