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知人の編著で上掲の本が上梓された。
宮田浩介編著、小畑和香子・南村多津恵・早川洋平著。学芸出版社から2023年11月10日刊、2400円。

「車中心の100年で失われた人のための街路」をとりもどす、ために。
スポーツや趣味、スタイルとしてのサイクル文化ではなく、すべての人のための自転車インフラを目指して。

そのような編著者らの主張とその実現への努力に、惜しみない賛意と敬意を呈したい。

そのあとがきの一部を以下に掲げる。

「初めて自転車に乗れた時のこと、左右のペダルの推進力をつなげ、ついに「離陸」した瞬間を覚えているだろうか。自転車は人にささやかな羽を与え、人を世界から切り離すことなく、世界を新たに発見させる。それは子どもでも使える身近な魔法であり、日常の中の祝祭である。/本書で目指したのは、「人」から出発して自転車の街を語ることだ。ただ通り抜けるだけではない。人が世界に触れ社会に関わっていく場としての道を増やそうと考えた時、想像力のキャンパスに描かれる人々のそばには、おのずと自転車の姿が浮かび上がってくるはずだ。(略)私たちの「公共」体験の大部分をなす日々の移動。その形態は、なによりもまちと社会の構造に強く決定づけられ、反復が他の可能性を忘れさせている。(略)なすべきことはあまりにも多いが、漕いでいる限り倒れはしないし、どこかで追い風も吹き、光も射すだろう」

蛇足だが、この本に目を通しながら思い出したのは、バスに乗ると目にする「自転車は乗ったらあなたもドライバー」という575標語。
この本で紹介されているような世界的な環境整備の動きに気付くと、これはその経路をネグレクトして、当面は自転車に乗る側に責任を押し付けて済まそうとする、手抜きのための標語に見えてくるのである。

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