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上掲は『地図の事典』(2021)の「想像地図 Imaginary maps」の項(拙稿のひとつ。pp.134-135)に掲載の図とその説明。
この風刺地図では、ロシアは1980年のモスクワオリンピックのマスコットだった熊ではなくて、蛸である。
蛸がデビルフィッシュdevil fishと呼ばれるようになったのは、ヴィクトル・ユーゴーの小説『海の労働者』(1866)がきっかけとされる。
図中にfor the yaar 1877とあるが、この年の3月は日本では西南戦争田原坂の戦い、4月はロシア帝国がオスマン帝国に宣戦布告した。トルストイの小説『アンナ・カレーニナ』に描かれた露土戦争だが、ルーマニアはそれを機にオスマン帝国から独立宣言を行った。
クリミア戦争はその20年以上前の1853‐56年で、その時ロシアの拡張運動は一旦挫折したものの、この風刺地図に描かれているのはそれが蛸のように不気味に復活したイメージである。
ソビエト連邦の崩壊は1991年だが、ジェルジンスキーを祖とする秘密警察の裔(すえ)であるKGB(カーゲーベー)出身者は生き延び、専制政治も情報操作もしぶとく延命する。
その代表例のプーチンにこそ、デビルフィッシュの戯画が相応しい。

帝政ロシアと今日のロシアの間にはさまっていた「ソ連」も、国家としての「振舞い」は何ら変わるものではなかったのである。

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