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二枚橋 その1

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写真左手は小金井市東町1丁目で野川に架かる二枚橋、右手はかつて是政線と称していた西武多摩川線の土手である。またそれぞれの背後は、右手が都立武蔵野公園、左手が同野川公園である。
中央の奥が明地となっているが、ここには調布市、府中市、小金井市の3市によって1957年に設立、2010年に解散した二枚橋衛生組合の可燃ゴミ焼却施設が存在していた。写真奥は調布市野水2丁目1番地で、リサイクルゴミや粗大ゴミを扱う「調布市クリーンセンター」の建物が見える。
この一帯は府中市、調布市、小金井市、三鷹市と4市の境界が輻輳し、いわゆる迷惑施設が立地しやすいのである。

このはずれの地に、いずれの時ともわからず古くから存在したのは橋であった。その次に古いのは鉄道とその土手で、多摩川で採掘した砂利運搬目的で開設され100年以上の歴史をもつ。それ以外はすべて近年の施設である。
戦後間もなくのベストセラー『武蔵野夫人』(大岡昇平)に描かれたこの一帯は、次のような景観だった。

「道は多摩川から砂利を運ぶ軽便鉄道の土手の下をくぐると、初めて斜面に追従することをやめ、この辺で急に狭くなった野川の流域の湿地を渡って、右の方の陽(ひ)にあぶられた草原に進み入る。二、三尺に足りない灌木の若木が叢(くさむら)をなしている間に、ところどころ赤松が立っている。」

ここで言う「道」とはいわゆる「はけの道」のことであり、主人公の進行方向は鉄道をトンネルでくぐるまでは西側から東に向かっていた。進行方向を南に変え、橋をわたって進み入った「草原」は今の野川公園である。大岡はその戦場体験の故もあって、土地の高低差や川幅の広狭といった地形や景観に敏感であったが、この橋とその名前にとくに留意することはなかった様子である。

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