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拙著『古地図で読み解く 江戸東京地形の謎』(2013年初版、二見書房)が出てから6年半。
2刷の際にいろいろ訂正もしたのだが、その後の研究の進展もあって、近年この本は絶版とし自分のところではじめからつくりなおすつもりでいた。

しかし版元としては書店に置けばコンスタントに売れる本の絶版は回避したいらしく、増補改訂も可の意向を示したため、先月は何日かかけてその改定差し替え部と増補部の原稿を作成した。
それがどのようなものであるかは仕上げを御覧じろというほかないが、増補部は「ミチとサカ」「まっすぐミチ 地形ミチ」「江戸のサカイ」「ガケの構造とサカの5類型」などの私見エッセンスとし、さらに「23区微地形分類表」の付録もつけたいと思っている。

そのうち「まっすぐミチ 地形ミチ」については、『東京人』(2013・8)に「道の権力論」として活字化し、その前後からあちこちで触れてきたので繰り返すことはせず、ここでは付けたりとして「多摩湖自転車歩行者道」と「玉川上水路」の2者比較を紹介しておきたい。
両者とも巨大都市に飲料水を供給するためのインフラストラクチャーであるが、前者は近代につくられたまっすぐミチで、後者は前近代の地形ミチの典型である。

一般に「多摩湖自転車道」として知られる前者は、行政名を東京都道253号保谷狭山自然公園自転車道線といい、多摩地区は東村山市の西武多摩湖線武蔵大和駅付近(標高約84m)と同西東京市新町(同約63m)の間21.9 kmをむすぶ都内最長の直線道路である。
ちなみに国内最長の直線道路は、明治初期樺戸集治監収容政治犯を酷使して開通した札幌と旭川をむすぶ国道12号の、美唄-滝川間29.2km、世界一の直線道路はオーストラリア南岸のEyre Highway(エアー・ハイウェイ)146.6kmという。

東京の最長直線道路が自動車を通さないのは地表下に水道幹線を埋設しているからだが、世田谷区喜多見と杉並区梅里をむすぶ23区の荒玉水道道路8.979kmが同様のまっすぐ水道道路であるにもかかわらず自動車通行可(ただし重量制限などあり)としているのとは対照的である。

近代の水道道路がまっすぐであるのは、中央集権国家がその権力と資力をもって地形を無視、というよりそれを局所改変することが可能であったからである。
この多摩湖自転車道でそのことがもっとも明瞭に視認できる場所は、「馬の背」と俗称される小平市花小金井南町3丁目の石神井川谷底低地との交差部(上掲photo)である。(次回につづく)

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