拙著がグラフィックな本となっているため、書店店頭での「類書」との関係で、誤解を生じている面があるようなので、「お断り」のコメントしておきます。

私がこの本で「言外」に主張しているのは、

①「東京の地形」に関して、「景観論」を基本とする言説は概ねダメだ、ということです。

かつて日本建築学会の『建築雑誌』が「新東京地形論」なる特集を組んで、タレントがらみのマチガイ素人談義を得々と展開しているのをみて吃驚したことがあったけれど、
その「風潮」はいまだつづいていて、他人の著作をつまみ食いした「地形カタログ」本が「売れている」らしい。
3・11を経てなお、空虚な論議が人気を得ていて、それが「除染」特需業界の一角から流出している様相には暗澹とするほかない。

拙著の冒頭にも強調したように、見えないところ、見えないものこそ重要なのです。

② ①に関連するけれども、地形は空間論ではなく、時間論のなかで「形成史」として捕えられるべきであり、その場合「人間以前」と「人間以後」をはっきり区別しなければならないこと。

つまり「自然地形」と「人為地形」を見わけ、その特性をわきまえることは、巨大都市に生きる人間としてきわめて重要なことなのです。

私の著作は、H・シュライバーの『道の文化史』を念頭に書いたものであったのだけれど、編集の方が私の文章を苦労して半分以下にパッチワークし、「絵」(ビジュアル)中心の本としてくださったのは痛し痒しで、
じっくり読んでいただければ、《文化史》の文脈はわかるはす。
表面だけみて「景観本」のレベルで云々する人がいるのは、残念というか心外。

まあ、本格的な『崖と坂の文化史』を書きなさい、ということなのかと思いますので、それを心して励みましょう。
その場合のタイトルは、『崖・坂・橋』ということになると思いますが―

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