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ワグネル先生記念碑

早稲田大学エクステンションセンターにおける2023年度春の私の講座は、昨日で終了した。
テーマは「東京23区の微地形」で、自治省コード番号順に今回は目黒区を扱い、巡見にはその北端と南端をフィールドとした。
具体的には東京大学駒場キャンパスと3つの小谷、および東京工業大学大岡山キャンパスと呑川低地である。
いずれも上位段丘面を基本とするが、好天に恵まれ、また講ずる側としても得るところ多大であった。

写真は東京工業大学大岡山キャンパス大岡山北地区の一画、ひょうたん池(呑川谷、谷底の一部)を足下にする谷壁斜面に建てられた記念碑である。

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残念ながら学生のほとんどは所在を知らず、教師でも多くはないという。
ただし現今日本語片仮名書き「ワグネル」とは、悪名高きロシアの戦争会社名ではある。
以下に碑文を示す。ただし原文は旧字片仮名書き、句読点なし、改行なしで、〇の部分は1字不明である。

ワグネル先生記念碑/勲二等ドクトル・ゴットフリード・ワグネル先生は独逸国の人。明治元年来朝、同二十五年十一月八日東京に没す。享年六十二。其間大学東校、同南校、東京開成学校、文部省製作学校、京都医学校、東京大学等に理化学及応用科学を講じ、東京職工学校に陶器玻璃工科を創設教導し、更に機織科設置を力説して没後に之ヲ実現せしむ。是実に東京工業大学窯業学科、並に紡織学科の濫觴たり。又明治初年鍋島藩に有田焼の改良を図りしを初め、無〇釉陶器旭焼の創製、煉瓦焼成用楕円形輪窯の集造、陶磁器焼成窯の改造、七宝陶磁器、染色写真、鍍金術、セメント、硝子、耐火煉瓦、石鹸、燐寸等各種工業を実地指導し、東洋美術の真髄を工芸に表さんとし、就中七宝には能く本邦の特色を発揮せしむ。曽て墺国維納及米国費府の万国博覧会に参与するや専ら先生の斡旋に倚り出品を調達陳列することを得、以て我国の文物を海外に紹介し、又勧業寮博物館の創設に参画する等、本邦新文化の揺籃時代に於て粉骨砕身、教育及産業の育成開発に尽瘁す。先生其性温和謙譲廉潔寡黙、子弟を撫育すること懇切、屡々私財を授して後進を扶掖す。其徳化普く及び、後年此界の泰斗、社会の重鎮たるもの門下に輩出し、本邦産業の興隆今日あるを致す。寔に先生に負ふ所大なり。茲に有志相謀り偉績を永く後毘に伝へん為、由緒深き東京工業大学庭内に記念碑を建設し、且先生の伝を陶管に記し之を碑蔭の地中に埋蔵し、以て敬慕報恩の意を表し、併せて青年教化の資となさんとす/昭和十二年十一月

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